山梨や長野でもなし得ていない試みにチャレンジしているサッカーチームがあります。
元サッカー日本代表監督、岡田武史氏が経営する「株式会社今治.夢スポーツ」(愛媛県今治市)FC今治です。

 現在、今治市内に新しいホームスタジアムを建設中ですが、高台にあるそのスタジアムの法面(のりめん)に今年、ぶどうの樹が植えられました。
世界的にみても大変ユニークな、サッカー場併設ぶどう畑。
FC今治(株式会社今治.夢スポーツ)の経営企画室、黒川浩太郎さんにお話を伺いました。

FC今治(株式会社今治.夢スポーツ) 経営企画室 黒川浩太郎さん

黒川さんインタビュー

—ワイナリーの概要を教えてください。

ヤマソーヴィニヨンを128株。マスカット・ベーリーAを同じく128株植えています。
それとは別に15本、1年早くに試験植栽したものがあります。
それぞれ位置をかえて植えることで水はけの違いなどを見ています。
マスカット・ベーリーAにしたのは大三島みんなのワイナリーで栽培実績があること。それに加えて、ヤマソーヴィニヨンも同様に病気などに比較的強いことが理由にあげられます。

—試験植栽を1年やってみていかがですか?

結構、草刈りが大変だなと(笑)

—黒川さんがお一人でされているのですか?

植樹の時はクラブスタッフとホーム戦の運営に普段携わっている「Voyage」というボランティア組織の方に加わっていただき、
合計30名ほどで植えました。

本当は100名規模のイベントを企画していたのですが当日の天候が「雨」の予報がでて中止をして、
前日(2022年1月22日)に植樹しました。
維持管理は気づいた人が草刈りをするといった具合ですが、私がやらないと雑草の勢いに負けてしまうという状況です。

植樹当日のレポート
(「FC今治 里山スタジアムプロジェクト」ページより)

https://satoyamastadium.com/1126/

 

—黒川さんは農水省のご出身とのことですので、こういうの(ぶどう栽培)がもともと好きだという嗜好をお持ちだったりするのですか?

大学の専攻は法律でしたので(笑)栽培のことは正直あんまり分からないです。
農水省に入ったのは生産の現場にすごく興味があってそういったところが「食」を支えていくとの思いを強くもっています。
現場は好きですね。

—ここ(圃場)は黒川さんの担当だと決められているのですか?

そんな感じになっているというところでしょうか(笑)

—そもそも、どうしてここ(スタジアム法面)にぶどうを植えようと?

今治市から土地をお借りする時に、この法面も含まれていました。
この広い法面をどうするんだということになった時、岡田が「ここでぶどうを育てて、俺はワインを作るんだ!」と語りはじめたんです。

—岡田会長の発案だったんですね。

 そうなんです。
岡田が「俺は本気で言っているのに誰も相手にしてくれない」と言うので「・・・じゃあ。苗木を買ってみますか?」と私の方で具体的に進めていきました。

—FC今治さんはいろいろと事業をされていますが、まだ、こちら(圃場)は<事業>ではありません。

はい。もちろん今の段階で売り上げがたっているわけではありません。
ワイン用の葡萄として収穫ができるのは最低でも3年はかかりますから、現段階ではテスト、試験といえます。
3年後にうまくいけば、委託醸造で約1000本のワインができるはずですが、それをどう販売するか等、何も決まっていません。
この葡萄栽培の結果を見ながら将来を考えていくつもりです。

—こちらの土壌の特質はいかがですか。

基本は西日本特有の真砂土(まさつち・まさど)になります。
斜面ですので水はけは当然いい。平地だと浸透が遅く水はけが悪いのですがこの圃場部は異なります。
あんまり手が掛けられないというところも正直あるので特に防除もせずにまずは自然農法的な手法でと考えています。
試験植栽を見ているとコンコードとかはここに合っているかなという感触です。

—仕立てはどのようにされますか?

一般的な垣根とか棚とかではなく、ドイツのライン川沿いの急斜面の葡萄畑を私が過去に見たことがありましてそれを参考に、
上に伸ばしていって左右から2本の長梢をとり、それを自分の幹に添えた棒へハート型を描くように結ぶといった(棒仕立て)をしてみたいなと考えています。

—大三島みんなのワイナリーの川田さん(栽培・醸造担当)からアドバイスをいただいているとのことですね。

はい。植樹や芽かきなど、その都度その都度、やり方などを教わっています。
次は剪定作業を教わることになると思います。

—川田さんはしまなみエリアにワイン文化を根付かせたいと常々、おっしゃっています。
ここもその一翼を担える存在になるかもしれません。将来、「ワイナリーができました!」と報告が聞けるかもしれませんね。

はい。そこまでもっていければ嬉しいですね。

世界的にも珍しいスタジアムのワイナリー、どんなワインができるのかとても楽しみですね。
ありがとうございました。