ワインのオフフレイバーのひとつ、ブショネ。

日本ワインに興味を持ち、ワインの勉強をし始めた方の中にはブショネに興味を持っている方も多いのではないでしょうか。

近年ブショネのワインは減少してきたものの、海外産ワインや日本ワインでもごくまれに存在するため、知識として入れておいて損はありません。

ここでは、ワイン初心者向けにブショネについて簡単に解説していきたいと思います。

ブショネとは?

ブショネとは、簡単にいえば汚染されたコルクによってワインが劣化してしまっている状態のこと。

その名は、フランス語でコルクを意味する「ブション(bouchon)」が由来だといわれています。

ブショネで汚染されたワインは、“放置された雑巾”や“濡れたダンボール”など表現されるなど、とにかくワインを台無しにする厄介もの。

一度、ブショネの影響を受けたワインは復活することはなく、基本的には廃棄されているようです。

そんなブショネですが、試飲会やレストラン、ワインバーなどで、“すみません。これ…ブショネですよね?”と言っている方を多く見かけます。

しかし、「ブショネ」とは一体どんなものなのか、しっかりと説明できる方は少なくないでしょう。

ブショネの基本について下記にまとめました。

  • TCAについて
  • TCAはどこからやってくる?
  • ブショネを防ぐには?

それぞれ解説していきます。

TCAについて

ブショネを引き起こすのは、TCA(2、4、6-トリクロロアニソール)と呼ばれる化学物質といわれています。(またテトラクロロアニソールも関連)

ほか、アニソール類もコルク汚染に一役買っているようですが、TCAが主犯格であることは間違いないでしょう。

TCAにおかされたコルクは、ごく少量であってもワインに深刻なダメージを与えるため、打栓後すぐにワインを劣化させてしまいます。

TCAの発生率は異論があるもののワイン全体の2%といわれており、100本に2本の割合で発生すると考えると比較的多いと考えることができるでしょう。

TCAはどこからやってくる?

TCAが発生するコルクは特別な場所で保管されているわけではなく、あくまでほかコルクと同じ場所で保存され、打栓されています。

では、なぜTCAが発生するのでしょうか。

まずTCAに関連しているのは塩素だといわれています。

以前、コルクの製造過程でおこなわれる塩素消毒が関連しているといわれていたようですが、過酸化水素に置き換えてもTCAは発生しているため、そればかりが要因ではないようです。

とある研究によると、ポルトガルでワイン用コルクに加工される前のコルクガシ自体を調査したところ、すでにこの状態でTCAが検出されたものがあったのだとか。

また、2004年にパスカル・シャトネらによっておこなわれた研究によると、コルクのカビ臭の原因としてTBA(2、4、6-トリブロモアニソール)が発見され、さらにその前駆体は殺虫剤として利用されているものだということが示唆されました。

つまり、TCAやTBAはコルク由来だけでなく、ワイナリーや樽由来といった可能性もあるといわれているのです。

ブショネを防ぐには?

ブショネを防ぐには次の方法が考えられます。

  • スクリューキャップを使う
  • 天然コルクを使わない
  • プラスチックなどコルクガシ由来のコルクを使わない
  • コルクガシを事前に分析する…など

上記で解説したようにブショネの要因は天然コルクだけではないものの、やはりその大半がそれ由来。

つまり、天然コルクを使わなければこの問題は無くなると考えることができます。

また、近年コルクからのカビ臭原因物質を除去する技術も出てきているそうなので、そういった技術を取り入れた天然コルクであれば問題ないかもしれません。

コルクの魅力は譲れない?

ブショネを防ぐために極端なことをいえば、コルクを廃止し、スクリューキャップなどを利用することになります。

しかし、ワインに天然コルクが使用されなくなる未来はとても切ない気持ちになるものです。

そもそもコルクは不活性で水や気体を通さない上に、絶妙に酸素を透過することから高級ワインを長期熟成させる上ではこれ以上ない役割を担っています。

何より、コルクを抜栓した後にそれに染み込んだワインの香りを確認したり、抜栓自体の行為が気分を高揚させてくれることは間違いありません。

とはいえ、オーストラリアの研究機関でおこなわれた調査によると、天然コルクや合成コルクなどはワインの香気成分を吸収してしまうことがわかっており、ますます立場が危うくなっているともいわれています。(オーストラリアワインは、スクリューキャップが主流)

仮にブショネに出会ったとしても、それはそれで“こればかりは仕方が無い”と割り切れるか。

最終的には、個人の考え方になってくるかもしれません。(販売側としては困るが…)

コルクを今一度見てみよう!

ワインを抜栓し、それを飲みきった後にコルクは破棄されます。

しかし、ブショネについてあらためて考えてみると、何も欠陥がなかった天然コルクが愛おしくなってくるものです。

ぜひ、ワインを飲む際は、コルクもじっくりと観察してみてはいかがでしょうか。

参考

コルクからのカビ臭原因物質(ハロアニ ソール)除去技術
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/107/3/107_177/_pdf

ジェイミー・グッド – ワインの科学