ワインは醸造酒の一種です。

世界には数多くの醸造酒が存在していますが、ワインのほかに日本人に馴染みがあるものといえば、日本酒、ビールではないでしょうか。

さて、「ワイン・日本酒・ビール」は同じ醸造酒ですがアルコール発酵の仕組みに違いがあり、それを知ることでそれぞれの特徴が捉えやすくなります。

ここでは、ワイン初心者が知っておきたい醸造酒のアルコール発酵の違いについて簡単に解説していきましょう。

アルコール発酵とは?

発酵とは、微生物の作用により物質の変化が起こる現象のことです。

お酒には発酵工程が必須であり、この工程によってアルコールが生成されることから、お酒における発酵はアルコール発酵と呼ばれています。

本来アルコール発酵はとても複雑な反応ですが、簡単にまとめると「糖分が酵母(微生物)の働きよってアルコールと二酸化炭素に転換される反応」といっていいでしょう。

アルコール発酵を終えたものがさまざまな工程を経て製品化されたお酒が、醸造酒となります。(ちなみに醸造酒を蒸留したものが、蒸留酒です)

アルコール発酵の違い

ワインと日本酒、ビールは同じ醸造酒ですがアルコール発酵の仕組みに違いがあります。

  • ワイン
  • 日本酒
  • ビール

それぞれ簡単に解説していきましょう。

ワイン

まず、アルコール発酵を成功させるには、「糖化」と「発酵」といった2つの生化学的作用が必要です。

ワインの原料はブドウのみですが、ブドウには糖分(ブドウ糖と果糖)や水分が含まれており、さらに果皮(または蔵つき酵母など)に酵母が存在していることか、それだけでアルコール発酵が成立します。

そのため、ワインは酒類の醸造方法の分類の上「単発酵」と分類されているようです。

ワインのアルコール発酵の流れを簡略して下記にまとめました。

ブドウに含まれる糖分

酵母によってアルコールと二酸化炭素に転換

ワインになる

とても、シンプルな流れです。

もちろん、果皮に付着した香り成分や果汁中の成分などが酵母の働きによって香りや味わいに寄与するため、ブドウの品質や酵母の選び方によってできあがるワインの個性が変わります。

ちなみに、「ブドウにふくまれる糖分が酵母によってアルコールが生成」されるわけですが、糖分を使い切るか否かで辛口・甘口といった調整も可能です。

日本酒

日本酒の原料は、米と米麹、水です。(醸造アルコールを使用することもある)

日本酒の場合、原料となる米自体に糖分は含まれていないことから、それ単体で「発酵」といった段階を踏むことはできません。

そのため、まず麹の酵素を利用して米のデンプンを糖分に変化させる必要があります。

さらに、酵母を利用したアルコール発酵も同時に行うことから「糖化」と「アルコール発酵」を同時に行う「並行複発酵」と呼ばれる醸造法に分類されているのです。(世界では類を見ない醸造法)

日本酒のアルコール発酵の流れを簡単に下記に記しました。

麹菌の作用を受けやすくするため米を蒸す(蒸米)

蒸した米に麹菌を繁殖させ糖化

酵母を育てるための酒母造り

タンク内に酒母を入れ、蒸米、麹、水を加えてアルコール発酵

日本酒は一つのタンクの中で糖化とアルコール発酵といった2つの生化学的作用を同時におこなっているところが、他醸造酒と大きな違いです。

ちなみに、アルコール発酵が終わった「醪」は、酒と酒粕に分けられ、酒は貯蔵の工程に回されます。

ビール

ビールの原料は基本的に麦芽・ホップ・水です。(副原料として米やコーンスターチなども使われる)

麦芽は主に二条大麦(ビール大麦)から造られていますが、これも日本酒の米同様、そのままではアルコール発酵させることができません。

そのため、麦のデンプンを麦芽が持つ糖化酵素で分解する必要があり、そこからできた麦汁をアルコール発酵しているところが特徴です。

そのため、ビールは先に糖化をおこなった後に発酵させるといった形式から「単行複発酵」に分類されます。

ビールのアルコール発酵の流れを簡単に下記にまとめました。

麦芽を浸麦槽で水分をふくませた後、発芽、熱風で焙燥

粉砕した麦芽を温水に混ぜることで、糖化液に(麦汁)

濾過後、ホップを加えて煮沸(熱麦汁になる)

熱麦汁を冷却し、酵母を加えてアルコール発酵させる

ちなみにビールには、「上面発酵」と「下面発酵」といった二つの種類が存在しており、前者は20℃ほどの麦汁をエール酵母で発酵。

後者は、熱麦汁を5℃に冷却した後、ラガー酵母で発酵させるタイプです。

「上面発酵」は、エールビールと呼ばれ個性の強いタイプのビールができます。

「下面発酵」は、シャープですっきりした味わいのラガービールとなり、日本で流通している“いつものビール”ができ上がるといった形です。

アルコール発酵についても知ろう!

ワイン・日本酒・ビール、どれもクオリティの高いものに仕上げるために原料にこだわるのは基本です。

しかし、アルコール発酵の仕組みを考えるとワインはブドウのみで勝負するしかないため、あらためて健全なブドウを使うことが重要であることが理解できたのではないでしょうか。

普段、お酒を飲む時にアルコール発酵の仕組みについて考えることはないと思います。

たまには普段飲んでいるお酒がどういった方法で造られているのか、少し勉強してみるのも面白いのではないでしょうか。

参考

ビールの豆知識 ビール酒造組合
https://www.brewers.or.jp/tips/production.html

オエノングループ 日本酒ができるまで
https://www.oenon.jp/product/sake/process/

灘の酒用語集 灘酒研究会
http://www.nada-ken.com/main/jp/index_ta/260.html