日本ワインを語る上で忘れてはいけないブドウ品種といえば、デラウェア。

アメリカのオハイオ州デラウェア群で命名されたブドウではありますが、ワインとしてはもちろん生食用としても日本で長年愛されているブドウ品種です。

しかし、日本ワインというと語られるのは甲州やマスカット・ベーリーA、ハイブリッド品種、そして海外品種が中心…。

ここでは、あらためてデラウェアについて考えていきたいと思います。

デラウェアはラブルスカ種

デラウェアは冒頭でもお伝えした通りアメリカ原産の自然交雑(ニュージャージー州で発見されたという説が有力)で生まれたブドウであり、日本に入ってきたのは1872年頃。

そのため、デラウェアはシャルドネやソーヴィニヨン・ブランなどヨーロッパ品種のワイン用ブドウ(ヴィティス・ヴィニフェラ種)ではなく、アメリカ系のラブルスカ種となります。

ラブルスカ種から造られるワインは独特の風味があるものの、近年デラウェアを使用したワインは高品質なものが多く、注目すべきものも少なくありません。

ワイン用という観点からは下に見られがちな品種ですが、おもしろい品種のひとつとして対峙していくべきブドウでもあるのではないでしょうか。

種ありがワイン用なの?

さて、近年デラウェアをはじめとする生食用ブドウのトレンドは「種なし」です。

子どもの頃は種のないブドウが存在するなど驚きでしかありませんでしたが、今では市場に出回る生食用ブドウに種がある方が珍しいかもしれません。

つまり、普通に考えればワインに使用されているデラウェアも生食用ですので、“まぁ種なしデラだろう”と想像する人がいてもおかしくはないわけです。

ジベレリン処理について

ワインに使用されるデラウェアの話の前に、そもそもなぜブドウが種なしになるのか考えていきましょう。

種なしブドウには、「ジベレリン処理」という植物モルモン処理がおこなれています。(日本人が発見したそうです!)

本来ブドウは、めしべに花粉がつくことで受粉し、子房に種子ができその後に実になります。

しかし、ジベレリン処理をおこなうことで受粉せずに実ができることから、結果ブドウに種が残らないわけです。

ちなみにジベレリン処理は品種によって二度おこなわれるそうで、種なしである上に立派に成長させるのはかなり難しいのだとか…。

そこまでしなければいけない…という日本人のニーズの厳しさを感じますが、そのニーズにしっかりと応えている生産者たちが多いところが日本のスゴさですね。

ワイン用に使われているデラウェアはどっち?

ジベレリン処理の話を知れば、ワインの原料に使われているデラウェアも当然ジベレリン処理を経た種なしブドウと思う方がほとんどでしょう。

しかし、ワインの原料となるデラウェアはほとんど“種あり”なのです。

その理由…

  • 種がある方が果皮の比率が上がることから、果皮周囲の味わいが出やすくなること。
  • 種ありデラウェアの方が収穫時の酸度が高くなること。

これはデラウェアに限ったことではなく、生食用ブドウからワインを造る場合、全てに当てはまるかもしれません。

ちなみに、ジベレリン処理は手間がかかるとお伝えしましたが、要するにワイン用に使用するデラウェアより手間がかかるということ。

そのため、就農して間もない方がワイン用デラウェアを手掛けることが多いのだそうです。

デラウェアにもこだわろう!

“種ありか種無しか?”というと少しマニアックな話ですが、生食用とワイン用双方に使用されているブドウだからこそ楽しめる話題でもあります。

逆にデラウェアのワインを飲む際は、普段食べている生食用のデラウェアとは別の視点で飲む必要もありそうです。

デラウェアも産地の違いや収穫時期の違い、醸造の仕方でワインの仕上がりが大きく違ってきます。

日本ワインを楽しむのであれば、ぜひデラウェアにも目を向けてみてはいかがでしょうか?

参考

Relation between the Type of Flowering and the Seedlessness Ratio in the GA-treated Clusters of ‘Muscat Bailey A’ Grape