ワインの個性を決定づけるのは、原料となるブドウです。
しかし、そのブドウを人間がどのようにつくるのか、つまりどのように醸造するのかによっても、“香り・風味・味わい”に違いが生まれます。
今回、醸造工程の中でも重要と言われている濾過作業を行わない、「無濾過ワイン」に焦点を当てました。近年、日本ワインの中でも人気を博している無濾過ワインとはどんなワインなのか。
基本的な知識とともに、「CRAFT WINE SHOP」がおすすめする無濾過ワインも合わせてお伝えしましょう。
無濾過ワインについて
ブドウ本来の味わいを楽しめると人気を博している、無濾過ワイン。
日本ワインファンの方であれば、“無濾過”の文字をワインラベルなどで見たことがあるのではないでしょうか。
無濾過ワインとは何か、基本的な知識を下記で解説していきます。
ワインの無濾過とは?
無濾過ワインを知る前に、ワインができるまでの工程を簡単におさらいしておきましょう。
一般的な赤ワイン・白ワインの製造工程を下記にまとめました。
赤ワインができるまでの工程 | 白ワインができるまでの工程 |
原料となるブドウを収穫→選果→除梗・破砕 | 原料となるブドウを収穫→選果→除梗・破砕 |
主発酵・醸し | 圧搾 |
圧搾 | 主発酵 |
マロラティック発酵 | 品種によってマロラティック発酵 |
樽熟成 | 熟成(ステンレス及び樽)※しない場合もある |
滓引き | 滓引き |
清澄・濾過 | 清澄・濾過 |
瓶詰め | 瓶詰め |
瓶熟成※しない場合もある | 瓶熟成※しない場合もある |
無濾過ワインはそのネーミング通り、“濾過をしないワイン”のことなので、上記の「清澄・濾過」を行わないワインを意味します。
なぜワインは清澄・濾過されるのでしょうか。
通常、アルコール発酵を終えたワインはたんぱく質をはじめ固形物、さまざまな微生物、酵母のかすが含まれているため、その色はぼんやりと白くにごっています。
清澄とは、清澄剤によってワイン中の不純物と結合させて色合いをクリアにする工程、そして、そこで取りきれなかった微生物などをフィルターで取り除く作業として濾過の工程が行われているのです。
ワイナリーでは、清澄・濾過によって微生物や酵母のかすなどを取り除き、さらに普段私たちが飲んでいるような透き通った外観となったワインを瓶詰めしています。
そう考えると、無濾過ワインは大切な醸造工程を省いた怠慢ワインといったイメージになってしまうかもしれませんが、ワインを濾過しないという考え方には深い理由があります。
ワインを無濾過で仕上げる理由
上記でお伝えしたように、清澄・濾過前のワインには酵母のかすなどさまざまな固形物が残っており、色もにごっています。
しかし、このワインに残されている固形物は複雑な風味や厚み、うまみを与えると考えられており、それらが清澄や濾過の工程を経ることで失われてしまうのです。
さらにメンブランフィルターなどで何度も細かく濾過してしまうと果実味やミネラル分、香味、色素、厚みが失われ、ワインが本来持っていたポテンシャルが失われてしまう恐れもあります。
できるだけ原料ブドウの魅力をワインに残したい、テロワールを表現したい、そういった思いから無濾過でワインをつくる生産者が世界的に、そして日本でも増加しているのが実情です。
また、無濾過ワインと一口に言ってもさまざまなスタイルでつくられているものがあるため、選ぶ楽しさがあります。
時間をかけて滓が自然に沈むまで待ち続け、上澄みだけを無濾過によって瓶詰めする生産者。
あえて多少の滓を残したかたちでにごりワインとして瓶詰めする生産者、そして滓引きを行わずに完全にアルコール発酵後の状態で瓶詰めするような生産者、どれも無濾過ワインでありながらそのスタイルは千差万別です。
無濾過ワインは香りの豊かさや複雑な風味、テクスチャーのあるワインになると考えられています。
早飲みが原則と考えられている一方、ワインのポテンシャルが高ければ適切な保存により長期熟成もできるものもあるほどです。
ちなみに日本ワインの中でも無濾過にこだわる生産者が多いですが、やはり“うまみ”の文化が背景にあるだけに、それを除去してしまうことに抵抗を感じているのかもしれません。
もちろん、日本ワインのほとんどが国内で消費されるため、飲み手に届くまでの期間が短いといった地の利を生かして無濾過ワインが多くつくられているところもあるでしょう。
無濾過ワインを選ぶ時は、無濾過という言葉だけで選ぶのではなく、その生産者の哲学を知った上で選ぶとよりワインを味わい深く楽しめるのではないでしょうか。
無濾過ワインの保存方法
そもそも、なぜワインは清澄・濾過されるのでしょうか。
ひとつは透明なワインであった方が健全で美しいワインといった見た目の問題がありますが、本来はワインの品質を安定させるために清澄・濾過されているのです。
アルコール発酵させたばかりのワインは、たんぱく質や酵母、微生物が残されているため、保存状態によってワインの品質が著しく低下してしまいます。
微生物汚染、さらに糖分が多く残った状態で酵母も残されていれば瓶内で次発酵が自然に起こり最悪スティル用のワインボトルは破裂する危険性もあるでしょう。
そのため、無濾過スタイルのワインに甘口ワインはほぼ存在せず、無濾過ワインにするのであればアルコール発酵後の糖分をできるだけ低下させるなどの対策が取られています。
そのため消費者側はいたずらに無濾過でつくられたワインではなく、たしかな技術と安全に考慮してつくられている無濾過ワインを選ぶ必要があるでしょう。
さて、健全な無濾過ワインであっても瓶内のワインは生き続けているため、自宅での保存方法は徹底するべきです。
ワインセラーでの保存が理想的ですが、所有していない方は下記条件の場所での保存を徹底しましょう。
- 暗所
- 冷所
- 振動の少ない場所
短期間であれば冷蔵庫でも構いませんが、振動が多いドア部分は避けましょう。
10~15℃の一定の温度を保つ場所がおすすめです。
もちろん、抜栓後はできる限り早く飲みきることが重要。
もし無濾過ワインの長期熟成を考えているのであれば、できる限りワインセラーなどワインにとって、“理想的”と言われている環境での保存を推奨します。
「CRAFT WINE SHOP」がおすすめする無濾過ワイン3選
ここからは、「CRAFT WINE SHOP」がおすすめする無濾過ワインを紹介していきます。
品質が高く、安心して飲める日本の無濾過ワインを集めました。
信州たかやまワイナリー/STW105 メルロー&カベルネ2019 無濾過
日本ワインファンにもお馴染みの信州たかやまワイナリーの無濾過ワイン、『STW105 メルロー&カベルネ2019 無濾過』。(「STW」は「Shinshu Takayama Winery」の頭文字から来たもの)
継続定番製品から離れ、新しい試みを取り入れるなどして試験的・限定的につくられたラボ的なワインで、そのラベルも実験室の白衣をイメージして作成されています。
メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたワインで、同社のヴァラエタル•シリーズ「メルロー&カベルネ2019」の醸造工程より、一部をとり分けてオリ下げや濾過といった過程を最小限にしてつくられた1本。
味わいはよりふくよかに仕上がっており、グラスに注ぐ際もたまにはゆっくりとデキャンタージュしながら楽しんでみてはいかがでしょうか。
ちなみに熟成のポテンシャルも兼ね備えているため、これからどのような変化を遂げるのかも楽しみめるワインです。
信州たかやまワイナリー/STW105 メルロー&カベルネ2019
無濾過 税込4,950円
一家農園/Gara Mogi (ガラモギ)2022
山形県東根市に位置する、一家農園。
「自然と調和した農業の仕組みを作る」の理念のもとに、仙台の中学の先輩後輩が集まって山形県東根市に創業したワイナリーです。
『Gara Mogi (ガラモギ)2022』は、デラウェアを主体にナイアガラ、スチューベンをブレンドした辛口のオレンジワイン。
“すべて収穫する”という山形の果樹農家の間で使われている言葉、「がらもぎ」を名乗るこの1本は、収穫後1日以上冷暗所で粗熱をとった後、房ごと破砕、低温の醸造室で皮と梗といっしょに3週間発酵。
バルーンプレスで搾汁しさらに2週間発酵させてつくられています。
酸化防止剤は一切使用しておらず、無濾過で瓶詰め。
皮と梗を一緒に仕込んだボリュームを感じさせる味わいで、ペアリングの幅も広い日本ワインファン必見の1本です。
一家農園/Gara Mogi (ガラモギ)2022
税込7,678円
ひかるの畑/志 Cocorozasi 2023
長野県東御市に位置する、ひかるの畑。
キリマンジャロ登山中に危うく命を落とす経験をしたのが転機となりワインづくりへの道へと進んだ鈴木輝氏が手がける、無濾過ワインです。
シャルドネを主体とした白ワインですが、その発酵期間はなんと1年以上続いたとか。
無濾過、無清澄、そして古樽を使用した味わい深いシャルドネです。
りんごや黄桃などの果実の香り、ほんのりと甘くリッチながらシャープな酸も残された繊細でエレガントな1本に仕上げられています。
ひかるの畑/志 Cocorozasi 2023
税込3,300円
まとめ
日本ワインでも多く見かけるようになった、無濾過ワイン。
ブドウが持つ本来のポテンシャルを生かしたいといったワイナリーの想いが詰め込まれた、ワイン好きにおすすめしたいワインです。
無濾過ワインの魅力を知るためには、まずは品質が保証された優れた無濾過ワインを飲んでみるところからがスタート。
ぜひ、本記事で紹介した、「CRAFT WINE SHOP」おすすめの無濾過ワインを手に取ってみてはいかがでしょうか。