赤ワインの王道品種といえば、「カベルネ・ソーヴィニヨン」や「ピノ・ノワール」、「シラー(シラーズ)」。

世界のワイン産地はもとより日本ワインにも多く使用されている人気品種です。

しかし、これら王道品種ではないものの、とりわけ日本で品質の高い赤ワインを生み出している品種があります。

それが、「カベルネ・フラン」です。

目覚ましい勢いで進化を続ける日本ワイン。

今後、「この日本ワイン美味しい!どんな品種なんだろう…ん?カベルネ・フラン…?」という方があらわれるはず。

ここでは、そんなカベルネ・フランの基礎知識について解説していきたいと思います。

カベルネ・フランとは?

カベルネ・フランは、数百年前のバスク地方から歴史が始まったといわれている黒ブドウ品種。(ボルドー原産ともいわれる)

ボルドーでは17世紀頃から植えられていると考えられており、後にロワール地方へと渡っていったと考えられています。

20世紀初頭、カベルネ・フランはボルドーで広く栽培されていたもののカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローへの人気が高まり置き換えられたことから、現在同産地では補助品種として知られる存在となりました。(ボルドー右岸では大きな役割を持つ)

今カベルネ・フランの主要産地はロワール地方で、ボルドーのようにブレンドされるのではなく単一品種でワインが造られる傾向にあります。

カベルネ・ソーヴィニヨンと比較すると発芽が10日ほど早く、冷涼な気候を好む上に病気にも強いことから比較的栽培しやすいブドウ品種と考えられているようです。

カベルネ・ソーヴィニヨンの親?

カベルネ・フランについて知る上で欠かせないトピックが、「カベルネ・ソーヴィニヨンとの関係性」です。

カベルネ・ソーヴィニヨンとネーミングが似ていることから近しい品種だと容易に想像できますが、じつはカベルネ・フランはカベルネ・ソーヴィニヨンの親。

1997年にカリフォルニア大学デイヴィス校でおこなれたDNAで関係艇の結果、カベルネ・ソーヴィニヨンは、カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交配によって生まれたことが判明したのです。

メトキシピラジンが関連する「ピーマン香」は、カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴ですが、カベルネ・フランにも多く含まれています。

何となく似ているどころか、この二つのブドウ品種はほぼ血縁関係の間柄であることはぜひとも覚えておきたいところです。

カベルネ・フランの個性

品質の高いカベルネ・フランというのは、パンチのある味わいというより「気品と格調高さ」が求められます。

比較的、栽培しやすい品種とお伝えしましたが、高貴な香りとフレッシュな酸味、しなやかなボディ感を兼ね備える高品質なカベルネ・フランを収穫するには、“カベルネ・フランに適した条件”で栽培される必要があるのです。

例えば、同品種はロワール地方 シノンのものが上質とされていますが、同産地は石灰質土壌で水はけがよく、何十年以上という熟成に耐えるカベルネ・フランを生み出すことで知られています。

もちろん、カベルネ・フランを醸造する際、力強く抽出するのではなく、“ピュア”な造りであることも必要がかもしれません。

そもそもロワール地方といえばオーガニックワイン(ナチュールなどもふくめ)が有名な産地であるため、画一的な味わいではなく、生産者それぞれがカベルネ・フランの個性を大切にしていることも有名産地で有り続ける所以のひとつでしょう。

ボリューム感のある濃いカベルネ・フランを造ることもスタイルのひとつですが、できるだけ日本ワインは、「気品と格調高さ」を目指すべきでしょう。

事実、日本のカベルネ・フランで評価の高いものはエレガントなスタイルのものばかり。

日本ワインの特徴とカベルネ・フランの個性が、見事にマッチしていると個人的には考えています。

カベルネ・フランの味わい

ここからは、カベルネ・フランの一般的な味わいについて解説していきます。

外観は、カベルネ・フランはカベルネ・ソーヴィニヨンより淡く、ピノ・ノワール寄りは濃いといった中くらいの濃さ。

紫色が強めなのが特徴です。

前述したメトキシピラジン由来の青い香り、スミレのような紫色の花、コンフィしたさくらんぼ、ココアなどの香りが感じられます。

基本的に樽熟成されるため、スパイシーなニュアンス、クローブや西洋杉、ドライな印象の香りも感じられるでしょう。

果皮が薄いことからタンニンは強過ぎず穏やかですが、酸がやや多いためフレッシュで全体的に引き締まった印象。

香りが豊かでありながら、緊張感のあるエレガントな全体像。

この特徴をベースに、いろいろなカベルネ・フランを飲み比べてみましょう。

ペアリング

カベルネ・フランは、複雑な香りとシャープな酸、控え目なタンニンが特徴です。

そのため、脂分が多過ぎない牛肉(タルタルなど)や鹿肉、馬刺などと合わせるとよいでしょう。

また、青さやスパイシーな風味も持ち合わせているので、ハーブ類やブラックペッパーなどを駆使すると料理との相性の良さがぐっと高まります。

引き締まった印象のカベルネ・フランですので、テクスチャーの観点から柔らか過ぎない噛ませる食材との相性もいいかもしれません。(厚めに切ったローストビーフや根菜の煮物など)

個人的には、レバーやつくねをたれで焼いた焼鳥がおすすめです。

ぜひ、お試しください。

カベルネ・フランをチェックしてみて!

シャルマンワイン、エーデルワイン、井筒ワイン、中央葡萄酒など…数多くのワイナリーで高品質なカベルネ・フランが醸されています。

ちなみにエーデルワインには、カベルネ・フランから造る白ワイン〈フラン・ブラン〉があるのでチェックしてみるとよいでしょう。

カベルネ・フランは、覚えておいて損はないブドウ品種。

繰り返しになりますが、今後日本ワインの中でも注目されるブドウ品種であることは間違いありません!

参照

ワインのノルイソプレノイド系香気成分-最近の研究から―

DNA多型解析による甲州の分類的検討

Growing Cabernet Franc Wine Grapes – Grapes