あらためて知りたい!シュール・リーの特徴とは?

コラム

「オリ(澱)の上」を意味する、シュール・リー(Sur Lie)。

各ワイナリーから、「甲州シュール・リー」という商品が出ていることも関連してか、日本ワインファンの方にも広く知られている言葉です。

しかし、シュール・リーとは何か…漠然としか理解していない方も多いかもしれません。

ここでは、あらためてシュール・リーについて考えていきたいと思います。

シュール・リーとは?

シュール・リーとは、発酵終了後にワインをオリの上に貯蔵し、酵母の自己消化による旨味や風味などを付与させる醸造テクニックです。

通常、白ワインの醸造は発酵後すぐにオリ引きがおこなわれるのですが、シュール・リー製法はその“オリ引き”をおこなわない醸造方法…ということになります。

冒頭でもお伝えしたように、日本ワインファンの方にとってシュール・リーという言葉自体は身近だと思いますが、日本ワイン独自の製法ではありません。

シュール・リーは世界中で採用されている醸造テクニックであり、とくにフランス ロワール地方が有名です。

ひとまず、基礎知識として覚えておきましょう。

ロワールとシュール・リー

シュール・リーで有名なのが、前述したロワール地方です。

ただし、シュール・リーが認められているのは、ロワール川の下流 ナント地方の「ミュスカデ」と「グロ・ブラン」のみ。

ロワール地方全体で採用されているわけではなさそうですので、ローワル地方全体の白ワインがシュール・リーで醸造されているわけではない部分に注意しましょう。

さて、一般的なシュール・リーの醸造方法をお伝えします。(ミュスカデの場合)

撹拌&デブルバージュ

18〜20℃で発酵

マロラティック発酵をおこなわず冷却処理(酒石除去)

翌春の瓶詰めまでオリ引きをおこなわない(シュール・リー)

日本では主に甲州種のワインにシュール・リーが利用されており、若干の違いがあるものの、ほとんど同じような流れを経て瓶詰め・出荷されていると考えられます。

旨味や風味をワインに付与するシュール・リー。

甲州と同様にミュスカデも個性が強くないエレガントなブドウ品種ですので、シュール・リーが伝統的に採用されているのかもしれません。

※公表されていないもののブルゴーニュの高級ワインやシャンパーニュでもシュール・リーは採用されているので調べてみるとおもしろいでしょう。

シュール・リーがワインに与えるもの

ここまではワイン関連の教科書に記載されているようなシュール・リーの基本的な話。

せっかくなので、もう少し深堀していきましょう。

ポリフェノールについて

シュール・リーを利用したワインは爽やかで微発泡であるものがほとんどです。

まず、シュール・リーによってアミノ酸やコロイド状のマンノプロテインなどの多糖類が発生します。(酵母の菌体から)

これら多糖類は樽から溶出する樽由来のポリフェノールを吸着し複合体を形成するため、口触りに関連するタンニンなどのポリフェノールによる攻撃性が和らいでいる可能性があると考えられています。

例えばタンニンは口内で高プロリンタンパク質と高ヒスチジンタンパク質が結合することにより感じる、収斂味。

これらが残らなくなればワインにとげとげしさがなくなり、爽やかな飲み心地になることは容易に想像できるでしょう。

また、微発泡の秘密ですが、シュール・リーをする際に発酵を終えきっていない酵母も残っているためそれが再発酵

アルコール発酵とは、糖を分解してアルコールと炭酸ガスが発生するメカニズムなので結果的に若干の発泡が残っている状態で仕上げられると考えられます。

外観や香りに与える影響

シュール・リーを経たワインは外観の色合いが淡く、さらにフレッシュな香りが楽しめるものが多い傾向にあります。

まず外観ですが、前述したようにシュール・リー中に多糖類などによってポリフェノールが吸着することからワイン中のポリフェノールが減少します。

白ワインが褐色化するのはワイン中のポリフェノールが関連しているため、結果的に一般的な樽熟成を経た白ワインに比べれば外観が淡くなることは理解できるはずです。

次に、香り。

一般的にシュール・リー中はオリが撹拌されることから、ワイン中の還元性イオウ化合物などに変化が起こったり、酵母の菌体から発せられるアミノ酸がワイン中のさまざまな成分と反応して新たなフレーバーを生み出すと考えられているようです。

さらに樽由来のバニリンなどの香気成分を酵母がアルコールに代謝してしまうことにより、木の香りが押さえられるところも爽やかな香りに仕上がる秘密かもしれません。

また、おもしろいのがソーヴィニヨン・ブランで長期間シュール・リーをおこなうと品種特性がよく出てくるという研究。

ソーヴィニヨン・ブランの柑橘系のニュアンスは3MHなどの揮発性チオールが関連しているといわれていますが、シュール・リーを経た白ワインはどことなく柑橘のニュアンスを感じます。(全てではないでしょうが…)

甲州きいろ香の香りも揮発性チオールに関連していますし、あらためてシュール・リーと甲州は相性が良い組み合わせだったのかもしれません。

シュール・リーは神秘

「甲州シュール・リー」という言葉。

自分は山梨県出身であることから馴染み深い言葉なのですが、あらめて深堀りすることでその、“すごさ”にあらためて気づかされました。

シュール・リーは神秘。

ちょっとおおげさですが、久々にさまざまな「甲州シュール・リー」を試したくなりました。

参考

フランスのワイン醸造学 (I) – 後藤奈美

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