【Wine Tourism】ワインツーリズムとは?海外との比較と日本の現状

【Wine Tourism】ワインツーリズムとは?海外との比較と日本の現状

はじめに・・・

日本ワイン大使に任命していただいたのに、すっかり開店休業状態になっておりました。大使になったのは、日本でもっとワインを目的に旅をする楽しみを、色々な方に知ってほしいと思ったからです。私もまだまだ行けていないワイナリーが沢山ありますが、葡萄の枝や新芽を見ただけでワクワクするくらいワインが好き。だから、どの季節に葡萄畑を訪れても、それぞれの美しさがあって楽しい。でも、旅として楽しむには「もう一歩!」と思うこともあるのが正直なところ。

これから5回にわたって、少し真面目にワインツーリズムの魅力や課題、そしてこれからの可能性について掘り下げていきます。

1. ワインツーリズムとは?

ワインツーリズム(Wine Tourism)とは、ワインを楽しむことを目的に旅をする観光スタイルのこと。単なるワイナリー訪問にとどまらず、地域の文化や食、自然と一体となった体験が含まれます。ワインを味わうだけでなく、ブドウ畑を散策し、醸造の過程を学び、地元の食文化とともに楽しむことで、その土地ならではのワインの魅力を存分に感じることができます。

近年、世界中でワインツーリズムが注目されており、多くの観光客がワインを軸に旅をするようになりました。その背景には、ワインが単なる嗜好品ではなく、地域のアイデンティティや歴史を反映した文化の一部として認識されるようになったことがあります。

2. 海外(アメリカ・ヨーロッパ)のワインツーリズムの現状

アメリカ:ナパ・ソノマのワインツーリズム

カリフォルニア州のナパ・バレーやソノマ・カウンティは、世界でも有数のワイン観光地として知られています。これらの地域では、観光インフラが非常に整っており、シャトルバスや専用のワインツアーが充実しています。訪問者は、テイスティングルームでワインを楽しみながら、ワインメーカーと直接交流し、その土地のテロワールやワイン造りの哲学について学ぶことができます。

ワイナリーに併設された高級ホテルやスパ施設が多く、ワインを中心としたリラックスした滞在が可能。さらには、ワイン列車やテーマパーク的な施設もあり、ワイン初心者から愛好家まで幅広く楽しめるエンタメ要素が充実しています。

ヨーロッパ:ボルドー、トスカーナのワインツーリズム

フランスのボルドーやイタリアのトスカーナは、ワイン文化が深く根付いた地域であり、ワインツーリズムの魅力もまた格別(ワインファンなら垂涎)!これらの地域では、歴史的なシャトーやワイン博物館を訪れ、長い年月をかけて培われたワイン造りの伝統を体験することができるのが魅力です。

また、ミシュラン星付きレストランや地元の食材を生かしたペアリングディナーが楽しめることも特徴の一つ。長期滞在型のワインツーリズムが主流であり、1週間以上滞在しながら複数のワイナリーを巡る旅が一般的です。

3. 日本のワインツーリズムの現状と海外との比較

【日本の強み】

日本のワインツーリズムには、他の国にはない魅力があります。その一つが、四季折々の美しい風景。春には桜とブドウ畑のコントラスト、秋には紅葉とともに楽しむワインは格別!また、和食とのペアリングの面白さも、日本ワインならではの強みです。例えば、甲州ワインは繊細な和食との相性が良く、日本の食文化と一体となった楽しみ方ができます。

さらに魅力的なのは、日本ならではのおもてなし文化が、ワイナリー訪問の満足度を高めていること。家族経営の小規模ワイナリーでは、ワインメーカーが直接ゲストを迎え、ワイン造りへのこだわりや背景を丁寧に説明してくれることもあります。これにより、単なる観光ではなく、人とのつながりを感じられる特別な体験が生まれているのです。

【日本の課題と改善の余地】

一方で、日本のワインツーリズムには課題も多く残されています。まず、ワイナリーへのアクセスの悪さが挙げられます。多くのワイナリーは公共交通機関が不便な場所にあり、個人旅行者にとって訪問のハードルが高くなっています。また、ワインに特化した宿泊施設やツアーが少なく、長期滞在型のワインツーリズムが確立されていません。

そのうえ、ワイナリーの規模が小さいため、訪問できる時間帯や曜日が限られているケースも多いです。多くのワイナリーではショップやテイスティングカウンターを設けており、購入や配送も可能な仕組みが整えられているものの、ワイナリーごとに個別の発送となるケースが多く、地域単位でまとめて配送できる仕組みがあれば、訪問者の利便性がさらに向上するのではないでしょうか。

4. 今後の展望

日本のワインツーリズムをさらに発展させるためには、具体的な施策が必要!

短期的には、巡回バスやワインタクシーの拡充が求められます。すでに勝沼や余市などでは、ワイナリー巡回のバスが運行されていて、ワイナリーが多くある地域ではさらなる拡充が一つの解決策となりそうです。

中期的には、地域のレストランや宿泊施設と提携し、「このレストランでは○○ワイナリーの全ラインナップが楽しめる」「この宿泊施設では○○ワイナリーのワインペアリングメニューがある」といった連携を強化することで、より魅力的な体験を提供できるでしょう。

長期的には、ワインリゾートの開発や、海外観光客向けの体験型ツアーの拡充を進めることが重要。例えば、フランスのボルドーのように、ワインとスパ、グルメを一体化した複合施設を作ることで、日本ならではのワインツーリズムを確立できるかもしれない・・・

日本のワインツーリズムはまだ発展途上ですが、海外の成功例を参考にしながら独自の魅力を活かすことで、より多くの人が楽しめる観光スタイルへと進化していくことが期待できます。

次回は「日本のワインツーリズムの魅力と課題」にフォーカスして、さらに深掘りしていきます。

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