移転前の恵比寿時代から、美食家の間で予約困難店として人気の外苑前「JULIA」。
兼ねてよりブックマークしていたお店のひとつですが、多くの人が知っている有名店というよりは、どちらかというとグルメな友人知人たちが贔屓にしている、知る人ぞ知る人気店という印象です。
彼らの体験談や投稿されたSNS情報からは、「スライダーが絶品」「最高のワインペアリングが楽しめる」など多くの好評価がみられ、とても気になっていました。

そのペアリングワインが、昨年11月からすべて日本ワインで提供されることになったとのことでさらに期待も膨らみ、早速お邪魔してきました。
評判の「最高のペアリング体験」、レポートしていきたいと思います。

JULIAのメニュー

JULIAのメニューはおまかせコース¥22,000-(ペアリングドリンク付き)のみ。
毎月メニューが変わりますが、その時々の旬の食材を使った料理が楽しめます。
そして、その食材のほとんどがオーナーご出身の茨城県産とゆかりがあるという沖縄県産というこだわり。
それら一皿ずつに、日本ワインを合わせていくという構成です。

今回訪問したのは2月。
お料理は、全部で11品。
そこに、ペアリングワイン11杯。

お料理×ワイン

では、どのようなお料理に、どういうワインが提供されたのか、具体的に紹介していきます。

RESPECT FOR FARMERS&NATURE
つくば産卵を使った洋風茶碗蒸し×大阪カタシモワイナリーのスパークリングワイン「たこシャン」
茶碗蒸しに乗っているエスプーマからは、ほのかにローズマリーなどのハーブが香り、スパークリングのデラウエアの華やかな甘酸っぱさと繋がる印象です。
これは食欲が刺激される組み合わせです!

カタシモワイナリー たこシャン
つくば産の卵の洋風茶碗蒸し

HALFBEAK
サヨリを、柑橘とヨーグルトのソース×フェンネルでいただきました。
合わせたのは、新潟県フェルミエ「アルバリーニョ」。
新潟ワインコーストの角田浜で造られるミネラリーなこのワインは、白桃やアプリコットのような香りが豊かで、酸も溌剌としています。
それゆえ、サヨリの生臭みが出てしまわないか心配しましたが、ヨーグルトソースにうまくマスキングされ、とても美味しくいただけました。
さらに、柑橘やフェンネルのおかげで、ワインの爽やかな酸がより伸びやかになった印象です。

サヨリ柑橘とヨーグルトソース
フェルミエ アルバリーニョ

SHIITAKE
城里町産椎茸のパイ包み焼きにマッシュルームの出汁×広島県三次市のTOMOEシリーズ「ピノ・ノワール」。
ここで早くもピノが出ちゃうの?と思いましたが、ほのかに出汁感のあるこの三次のピノノワールは、確かにキノコに合わないわけがないですね。
目の前にお料理が運ばれる前からすでに椎茸のよい香りが店内に満ち、早くもピノノワールが進んでしまいました。

広島三次ワイナリー TOMOEピノノワール
椎茸のパイ包み焼き

CUTLASS FISH
太刀魚のグリルにプティヴェールが添えられバルサミコがかけられています。ソースは蕗の薹。
山梨県にある四恩醸造のロゼ「向日葵」。
鮮やかなグリーンのソースとチャーミングなピンク色のロゼ、見た目がもう春!心躍ります。(ワインのエチケットはすでに夏ですね。)
春野菜の苦みに微かに甘やかさを感じるワインが口内で調和してくれるのが良いですね。

太刀魚とプティメルヴェール 蕗の薹ソース×四恩醸造 向日葵

GROUPER
今月のお魚はクエ!そこに黒キャベツが添えられ、アクセントに柚子味噌も。
このクエの新鮮さゆえの歯ごたえが活きるような身への火入れ具合、皮目のパリパリ食感、素晴らしかったです。
魚を焼くこと自体は自宅でもできますが、このような、食材の状態によってその良さを最大限に味わえるような調理に出会えると、お金を払ってプロのお料理をいただく価値を改めて感じます。
こちらには、山梨県甲斐ワイナリーの「かざま甲州」。
繊細な味のクエに寄り添うような甲州です。柚子味噌もよいブリッジになってる気がします。

クエと黒キャベツのロースト×甲斐ワイナリー かざま甲州

OKUKUJI-SHAMO
品評会で1位を獲得したこともある奥久慈の軍鶏。
こちらのモモ、ムネ、ササミの3部位をローストしたものを、ウイスキーソースでいただきました。
この火入れもまた完璧。部位によって工夫が凝らしてあるように思います。
身のほどよい弾力も楽しめ、本当に美味しい!
ワインは、埼玉県秩父にある兎田ワイナリーの「ユニテ」。
ウイスキー樽で熟成された赤ワイン。それをウイスキーソースの軍鶏といただくなんて、粋な組み合わせですね。
添えてある金平のような甘辛で炊いたごぼうは、ふんわり赤ワインの風味で見た目もスタイリッシュ。
私の作る金平ゴボウとは明らかに別物でした。当然か。

奥久慈の軍鶏 ウィスキーソース×秩父兎田ワイナリー ユニテ

FARMER’S ARTWORKS
ゆっくりローストされた蕪。ソースは蕪の葉。
メインの後に、シンプルに蕪の甘みを楽しむ一皿とは、なんて優しいプレゼンテーションでしょう。
一緒にいただいたのは、山梨県勝沼にある岩崎醸造のオレンジワイン「アンティーク甲州かもし」。
食べ進めると、蕪の下にオレンジピールが隠されていて、それがまたオレンジワインの杏子のような香りをより美味しくさせてくれました。

蕪のロースト 蕪の葉ソース×岩崎醸造アンティーク甲州かもし

SLIDER
これこれ。JULIAの有名な一品です。
一緒にいただいたワインは、茨城県つくば市、ビーズニーズヴィンヤーズの「Overdrive Oak」。
実はこのワイン、てっきりメインの肉料理と一緒に出てくるものと思っていたので、このタイミングは少し意外でした。
しかしスライダーを一口いただきましたら、タレがガツンと主張のあるお味。なるほど、だからここでローヌブレンド系なのねと納得です。
3日間煮込んだ甘辛のバーベキューポークに奥久慈のりんごの組み合わせ、食感も楽しいしすごく美味しい!
小さなバンズも茨城県牛久産の全粒粉を使った自家製だそう。後引くお味でもう一個食べたくなります。

スペシャリテ スライダー
ビーズニーズ オーバードライブ

NEWYORK CHEESE CAKE
チーズケーキのアイスクリームに合わせたのは、なんと日本酒!
デザートに日本酒とは意外でしたが、そういえばアミノ酸が多い味わい深いタイプのチーズには、私も日本酒を合わせることがありますし、ウォッシュチーズの中には、熟成時に日本酒で表皮をウォッシングするものもありますね。

NYチーズケーキのアイスクリーム×日本酒 霧筑波

TOFU
デザートに豆腐ってなんだろうね、と気になっていたこのメニュー。
豆腐とホワイトチョコのムースと沖縄県浜比嘉島の塩のアイスクリームにみたらしのゼリーでした。
軽く混ぜていただくのが美味しいかな。
こちらには、山梨県蒼龍葡萄酒のマスカット・ベーリーAとブランデーの酒精強化ワインがペアリングされました。
お豆腐とブランデー?!とこちらも意外性のある組み合わせでしたが、甘さ控えめなお豆腐や存在感のある塩のアイスクリームに対し、このブランデーがほど良く甘酸っぱいものだったので、ソースのような役割を果たし、オトナなデザートに仕上がっていました。

豆腐とホワイトチョコのムース、塩アイスクリーム、みたらしソース×MBAのブランデー

CURTAIN CALL
最後はトリュフチョコレートとコーヒーが、和テイストの設えで提供されました。
落ち着いて、本日のお料理とワインをしみじみと振り返ります。

ペアリング体験のまとめ

全11品でのワインペアリング。
最近フランス料理のフルコースを最後までいただくことが体力的に厳しくなってきていたため、実は量を心配していましたが、結果最後まで美味しく、とても気持ちよくいただくことができました。

コースのお料理には野菜が多く使われていることや、それぞれ食材の味を楽しめるような調理であること、そして日本ワインがそれらお料理に対し寄り添ったり、バランスを取ったり、アクセントになったり、とてもよい役割を果たしてくれることがそれぞれ楽しく、まさに評判通り「最高のペアリング」を満喫できました。

また、これらを楽しむ空間も大事ですよね。
カウンター10席のみで、黒を基調としたシックな店内は、とてもお洒落で雰囲気があります。
客席からは、NAOシェフが軍鶏を捌く手元やソースをゆっくりとかける姿を見ることができ、お料理を待つ時間も楽しめます。
さらに、ソムリエ本橋さんの、都度スタイリッシュなケースからクチポールのカトラリーを並べるしぐさなどは、まるでグラフやハリーウィンストンで高級ジュエリーを見せていただく瞬間を思わせるような優雅さ。

お料理とワインと空間(サービス)、これらすべてが相まって「最高のペアリング体験」が完成されていることを感じました。

毎月食材もメニューも変わっていくJULIA。
次のシーズンもまた体験したいと思います。

【JULIA(ジュリア)】
https://www.cardenas.co.jp/shop/family/julia/