11月15日から18日にかけて、ポルトガルのヴィセウにて、世界でもっとも権威あるチーズコンテストのひとつ「World Cheese Awards 2024」(以下WCA)が開催されました。
世界47カ国から4,786アイテムが出品され、日本からも54アイテムが本大会に挑みました。
日本から出品されたチーズは、Super Goldが1品!Goldが4品、Silver8品、Bronze8品、合計21品が入賞*する快挙!
北海道のチーズ工房CHEESEDOMが作る「瀬棚」はSuper Goldを獲得しました。
このWCAとJCA(Japan Cheese Awards)の2大チーズコンテストの成果報告会が行われ、チーズプロフェッショナル協会坂上あき会長はじめ、コンテストに関わる有識者より会のレビューや日本のチーズの現状について聞くことができました。
国内外2大大会のレビュー
坂上あき会長と寺尾智也氏(日本チーズ協会理事)のトークセッションという形で、2大大会のレビューが行われました。
自身も生産者として、広内エゾリスの谷チーズ社代表を務める寺尾智也氏。
今回のJCAでは「有機グラスフェッド ます」が金賞を受賞したことについて、「グラスフェッドでのチーズが評価されたことは大変嬉しく、酪農家のモチベーションにもつながることでした。グラスフェッドのミルクでのチーズは貴重であり、通常の1/4程度しか生産されないが、グラスフェッドならではの風景を味で表現できたらと常々思っていたことが叶ったように思う。」と話された。
また、二年に一度開催されるJCAは、普段各地でチーズ作りに励む生産者が一同に集まれるという貴重な機会。
同窓会のような、コミュニティ形成ができることをありがたく感じているとのこと。
WCAについて
開催国は持ち回りで開催される世界最大のチーズコンテストのひとつ。今年はポルトガルのヴィセウにて開催された。
世界47カ国から4,786アイテムが出品され、104のテーブルに並べられ、世界中から240名の審査員が参加しました。
各テーブルにはカテゴリー問わず45種類のチーズが並べられ、それぞれ2,3名が審査するシステム。
賞の種類は、金、銀、銅。そして各テーブルの最高点がスーパーゴールドとなり二次審査へ。
最終的なチャンピオンを決める審査は公開で行われる。
自身も審査員として参加した寺尾氏は、「評価の軸について、それぞれの評価基準を知ることで、自分の基準を客観視できた」「カテゴリーを横断した審査形式により、カテゴリーを超えた想像力が湧いてくるような効果も感じた」と振り返る。
また、今回海外のコンテストにて本場の白カビを押さえて日本の白カビ「瀬棚」(CHEESEDOM)がスーパーゴールドを受賞したことについて、坂上氏は「日本のミルクの質が認められたこととも感じている」と話す。
日本のチーズを食べるワークショップも開催
今回は、WCAで集まった世界中の専門家に日本のチーズを召し上がってもらうワークショップも開催され、かなりポジティブな意見が多く聞けたそう。
とくに「生乳の品質が良い」「ミネラルを感じる」というコメントは生産者にとって嬉しいものだったであろう。
また、「『日本のチーズはきれいすぎる』これは技術力があることがわかる。今後は本当の意味での日本らしさをつくっていくとよいのでは」という貴重な意見も聞けたことは、欧米のチーズの模倣からスタートしたものが、現在日本らしいチーズ作りを目指していくステージとなった彼らにとって、非常に有意義なものであったとのこと。
今後について寺尾氏は、「国内の工房数が増加している、つまり競合も増えているわけだが、せっかくならば地域での取り組みを強化していき、「地域」「観光」「食」を絡めることで海外へ明確に発信していければよいと思う」と話す。
世界で認められる国産チーズの可能性とトレンド予測
日本料理人齋藤章雄氏、木次乳業川本英二氏、坂上あき会長の3名によるトークセッション形式で行われた。
ここでは、齋藤料理長による木次乳業オールドゴーダを使用した料理が提供され、日常の食卓でどう気軽にチーズを使うとよいかなどのヒントを多く伝えられた。
釣りが趣味のチーズ職人川本氏も「イカ飯にチーズを入れたらそれはそれは美味しかった」と具体的なアイディアを示しつつ、「食べ物ですからね、学問にせず色々気軽に試して、美味しい!と思えばそれが正解なのではないでしょうか」とフランクに語られた。
チーズとワインのペアリングについての質問には、坂上会長より日本酒との相性が良いこと等、専門的見地から様々な参考になる情報を教えてもらえたが、なにより「合わせてみて美味しいと思うものは合う!ではいかがでしょうか笑」というコメントは、参加者が気軽に試してみることへの大きな後押しになったのではないだろうか。
来賓の農林水産省畜産局 牛乳乳製品課 伊藤寿氏は、「今後海外への輸出を視野に入れていくと、やはりその価格に見合う「ブランド力の強化」は重要な課題だと認識している」と話された。
今回の2大チーズコンテストでの日本のチーズの大躍進は、間違いなくこの「ブランド力強化」の大きな一歩となったものであろう。
磯部 美由紀
日本ワイン.jp 編集長★チーフエディター★
J.S.A認定 ワインエキスパート / C.P.A認定 チーズプロフェッショナル
映画 フロマージュ・ジャポネ 制作実行委員会 事務局長
https://nihoncheese.jp
ワイン記事監修実績:すてきテラス
Picky’s こだわり楽しむ、もの選び〔ピッキーズ〕