ワインテイスティングの力を磨きたいという方は多いでしょう。
グラスに入ったワインについて、まるで言葉を紡ぐように表現できるようになればいっぱしの、「ワイン通」として認められたような気になるものです。
ここでは、初心者におすすめのワインテイスティングの手法についてお伝えします。
知っているだけでワインとの付き合い方が変わるはずですので、ぜひチェックしてみてください。
繰り返しの練習と記憶
神の味覚と嗅覚を持つ人物のみが、優秀なワインテイスターになれる。
そう考えている方もいるかもしれません。
一部、天才のような味覚の持ち主がいるのは事実ですが、基本的にどなたでもある程度のテイスターになることは可能です。
そのポイントは、繰り返しの練習と記憶(長期記憶)。
ワインテイスティングには、ある一定の“型”が存在しており、それに当てはめてながら練習し続けることでテイスティング能力が身に付くようになります。
基本のテイスティング手法
ワインテイスティングの型についてはスクールの先生や教科書によって差異がありますが、ほとんどが同じような流れでまとめられています。
そもそも、ここでいう型は一般的にワインテイスティング手法と呼ばれているもので、“ワインテイスティング方法の基本の流れ”と考えてもらうとわかりやすいでしょう。
では、早速その手法についてお伝えしていきます。
ワインテイスティング前の準備
まず、ワインをテイスティングする上で重要になるのが環境です。
できるだけ余計なにおいのしない、静かで落ち着いた環境を用意してください。
後でワインの色を確かめるために真っ白なテーブルクロスや紙をテーブルの上に用意しておくと便利です。
ワイングラスについても、国際規格テイスティング・グラスを用意するとよいでしょう。(一般的なワイングラスでよいとは思います)
ワインをグラスに1/3から1/4ほど注いだら…テイスティングのスタートです。
ワインテイスティングの流れ
ワインテイスティングにはある、ある一定の手順があります。
- 外観
- 香り
- 味わい
テイスターはこれら要素を順番に確認していき、最終的にどのようなテイスティングしたワインの特徴が導き出します。(答えというか、そのワインの特徴などの総評を導きだす)
とはいえ、「色は透明で香りはフルーティー、味は…酸っぱい」など、ワインの個性を単純化させてしまってはあまりテイスティングしている意味がありません。
それぞれの要素を細分化していきながら、そのパズルのピースを集めて最終的にワインの全体像を作り上げるといったやり方に挑戦しましょう。
例えば…
外観
- 清澄度・明るさ
- 色の濃さ
- 色合いなど
香り
- 健全度
- 香りの強さ
- 香りの特徴
- 熟成度合いなど
味わい
- アタックの強さ
- 甘味
- 酸味
- 渋み
- ボディ感
- 風味の特徴
- 余韻など
といった感じで、いろいろな要素を感じながらワインと対峙してみましょう。
ちなみにソムリエ試験やWSETなどの資格試験の場合、これらから導きだされる品種や産地、熟成年数、飲み頃などそういった当てる必要がありますが、ふつうにワインテイスティングにチャレンジするのであれば無理をせず、要素を感じ取る練習だけでもいいと思います。
ワインテイスティングの用語を覚える
ワインテイスティングの流れについて理解したら、次はワインを表現する用語です。
ワインを表現する言葉は数多く存在するため覚えるのは大変ですが、一定のカテゴリにわけられているので、それを意識しながら覚えていくと身に付きやすいでしょう。
そのカテゴリが主にこれらです。
- 第1アロマ 〜フローラル、核果、柑橘、青・赤・黒の果実、ハーブ、スパイスなど〜
- 第2アロマ 〜酵母由来、MLF由来、樽由来、火打石など〜
- 第3アロマ 〜熟成による影響、酸化によるもの、フルーツ由来〜
“まずは第1アロマだったらなんだろう…。次は第2アロマの中には…”といった感じで追いかけていけば、ひとつのワインに対してさまざまな用語を出すことができるでしょう。
これらに加えて、タンニンなどのボディ感、酸味、テクスチャー、アルコール度数に関連する言葉を追加すると、なおプロっぽい言葉づかいに聞こえるかもしれません。
ちなみに、第1アロマのフローラルには、アカシアやゼラニウム、バラ、アイリス、スミレといった花を思わせる用語が当てはまります。
これらは、アロマホイールに記載されていたり、ワインテイスティングを主軸とした参考本などに記載されているので、それらを参考にして覚えていきましょう。
とにかく繰り返し、声に出す
これらに加えてスクールなどでは細かなワインテイスティング手法が用意されていると思います。
とはいえを、前述した内容を参考するだけでテイスティング能力はかなり上達するはずです。
また、初心者であろうが、スクールに通っていようが、ワイン通であろうが、ワインテイスティングを上達させるには繰り返し練習し、用語をどんどん声に出すことが重要になります。
例えば世界で活躍するワインテイスターの方たちがなぜ優れた能力を発揮できているかといえば、テイスティングしている数、それを表現する言葉の発信回数の多さが桁違いだからです。
受験勉強のようにその時だけ気が狂ったかのようにテイスティングしても、その後数年間にテイスティングの練習を何もしなければ能力は確実に落ちます。(ああ、そうだったわ!という断片的な思い出は残りますが)
軽く前述したワインテイスティングのポイント“繰り返しの練習と記憶(長期記憶)”と記載しましたが、一時的に脳内に情報を入れこむ短期記憶ではなく、繰り返すことで会得できる長期記憶として刻み込まなければ、なかなか上達していきません。
同じカベルネ・ソーヴィニヨンをテイスティングした際、数年前に1度だけ飲んだことがあるという人と、日々世界中のカベルネ・ソーヴィニヨンをテイスティングしているプロであれば表現方法や出てくる言葉に差があるのは当然でしょう。
「よし、僕(私)はワインに魂を売った!趣味ではなく、本気でやってやる!」という方は、腰を据えてワインをテイスティングしまくってみてはいかがでしょうか。
ワインライフがぐっと楽しくなる
やっぱりワインは面倒くさいな…と思ってしまった方もいるかもしれません。
たしかに、無理にワインテイスティングを学ぶ必要もありませんし、楽しく気軽に仲間たちとワインを飲むことの方がずっと大切です。
とはいえ、ワインテイスティングを知っているのと知らないのでは、ワインの楽しみ方が大きく変わってくるのは間違いありません。
音楽で例えるのであれば、「なんか、音鳴ってる」と漠然と見るより、「ベースの人、70年代後期のフェンダーのプレベか。いいグルーヴ。ドラムも〇〇さんがサポートか!だから、曲調も60年代のサーフミュージックを彷彿とさせる、ノスタルジックかつ新鮮なヤツなんだ」といった聞き方の方がその音楽を楽しめるのと一緒です。
何となくからでも、ぜひ一度真剣にワインテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
参考
ワインの味の科学 | ジェイミー・グッド